在来種の蕎麦 |
最近、刊行された雑誌でいわゆる「在来種の蕎麦」を特集テーマで取りあげたものが
あります。
主にガイド役として、書かれているのは私も何度か取材や、お目に掛かっている、
片山虎之介さんです。
食文化にも造詣が深く、現在は「伝統食文化研究家」の肩書きをお持ちのようです。
この中で取り上げているのは、元々その地域で育てられて、食されてきた蕎麦の
本来ある品種です。
例えば、奈川在来・会津在来といった品種です。
これに対して、今「蕎麦」をそば店だけでなく色々な場面で作るに際して、使用している
割合が多い品種は、いわゆる「改良種」といわれているものです。
信濃1号・みやざきおおつぶなど。
勿論、この本でも書かれているように改良種は、農家が扱い易く、生産効率も上げる為に
改良されてきた物で、安定的に日本の蕎麦の需要を支えています。
在来種は、いわば、昔からの天然物とでも言えるように私は思います。
昔とそばの味が変わった、というのは私も実感する所です。
それは、この本でも触れているように、在来種が減り、収穫後の乾燥なども機械化
されてきた事も確かに一因でしょう。
これからの蕎麦の世界では、自家製粉も飽和気味ですから、自ずと原料を巡る動きが
出て来ることは、流れとして理解は出来ます。
また、蕎麦は原料の品質がそのまま「製品」=そば切りに出るのも顕著な食べ物です。
色々な、議論や考え方があって良いと思います。
私も、一応、両方を使ったことはありますし、その特徴は理解しているつもりです。
但し、こうしたいわば「天然物」を巡る争奪や、蕎麦やそば屋を気軽に楽しむ「文化」が
無くならない事を願っています。
美味しい物を追求するのは大切ですが、何度も書いているようにお店としての立場で
大事なのは、「人」も含めた魅力があるのかという事だと思います。
「利き蕎麦」などいわば、マニアの食べ方だけでなく、気楽にそばとそば屋の
空気を楽しむ事も、広く知って欲しいというのがそばを広める立場としては
大切に思います。
誤解なきようにしたいものですが、知識があっても無くても「蕎麦」は
素直に如何様にでも楽しめるものです。