「お座敷そば」の系譜 |
最近発売の「蕎麦春秋NO.35」では「禅味会」のことが取り上げられています。
禅味会=市川一茶庵で修行したお店の暖簾会です。
市川一茶庵は祖父-片倉康雄に師事した山寺芳男氏が昭和34年にJR本八幡
駅近くに開いた、自宅改装のお店です。
山寺氏と一茶庵の出会いは、山寺氏が足利一茶庵の出前用のスクーターを
調達した先の経営者だったことから始まります。
従って、その当時まだ教室はありませんでしたから、店で修行されましたが、
やはりある意味、異業種からの参入だったわけで、現在当方の教室で学ぶ方達と
同じといってもよいでしょう。
私も伺ったことがありますが、本当に普通の民家へ上がる、という感覚のお店です。
何とも言えない「落ち着き感」があり、売り物の鴨鍋=(浄饌鍋)などの鴨料理を味わう
会食なども楽しめるコンセプトの基礎を築きあげました。
今でも「自宅改装」のお店が教室からも巣立っています。
身近な「自宅」が果たして「お店」になるのか?
不安になる方も多いのですが、いくつかの設備面の課題などをクリアすれば、思うほど
難しいものでもありません。
テナントのように、賃料がかからない、改装費用も安く済むケースも多い、といった
メリットがあります。
また、最大のメリットは「自宅」というくつろげる空間を客席に使えるので、非常に
居心地の良い空間ができる可能性が高い、ということです。
勿論、相反する懸念点としては立地的に商売に向かない住宅地であったり、
「厨房」とすべき台所(キッチン)の使い勝手が店舗仕様に変更しづらい、
といった点があります。
しかし、そのマイナス点を補って余りある「開業の現実性」があります。
何もない場所からお店をつくる、ということと比較すれば、自分の家を
利用すれば、お店が開ける、という感覚は大きなアドバンテージがあります。
全ての方ができる形でないのは当然ですが、近年は使用していないご実家や
ご親族の建物を利用して開業したケースもあります。
また、最近では「リビングそば」といったコンセプトのお店も誕生しつつあります。
時代の変遷を経て、お座敷からリビングへ、そばをめぐるお店のシンプルで
魅力のある一つのタイプを象徴しているように感じます。
祖父の時代から、この流れを当方では奨励しています。
開業の一つの代表例である、といっても良いでしょう。