「料理狂」幻冬舎文庫 |
1960年代から70年代にいわゆる「修行」を積んだ料理人たちへのインタビュー集です。
主にはフレンチの方が多く、フランスでの修行経験談なども語られていますが、
和食の有名店主=分とく山の野﨑洋光氏も登場されています。
60年代から70年代に修行されている方が多いので、日本国内で開業されて活躍
され始めた時期が80年代から90年代、ということになり、いわゆるバブル期を店主として
乗り切った、という経験も語られています。
丁度、私も紹介されている方々の店を食べ歩いていた時期にも繋がるので、懐かしさも
含めて読みました。
料理を志したきっかけや動機、海外での修行の苦労話等も記されていますが、
この本のタイトル通り、もう少し掘り下げて、ストレートな本音が書かれているのが
魅力でしょう。
料理人としては、一流になっても「商売」=「経営」では皆さん結構苦労された
経験談はある種興味深いものです。
また、共通して言えるのは「料理が好き」であること、「素材」へのこだわりが並大抵では
ないこと、等です。
この時代の「修行」は現在のように労働時間や賃金等の労働環境が飲食業では
ルールがあってないような実態であったことも、明確に語られています。
皆さん、過酷な労働条件の中、それよりも自分の技術習得や成長を優先させてきた方々
ばかりです。
このことは決して是認はできませんが、こうしたいわば修羅場を経ているからこそ、のちの
グルメ大国ニッポンの礎を築いた錚々たるメンバーになり得たともいえるでしょう。
受けとり方は様々だと思います。
当方の教室とは対極にある形ともいえるかもしれません。
これから料理を目指す方達へのメッセージも必ずしも甘い物だけではありません。
ただ、こうした形でしか成し得なかった時代背景や生きざまは大いに興味深いものでした。
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